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Vol.124 井上式!よくわかる目の病気事典「ドライアイ」


2023年4月号 Vol.124井上眼科だより

4 月は花粉症や新生活の季節です。この時期に気になる眼の病気が「ドライアイ」。ドライアイの患者は国内に2200 万人以上と推定されており、もはや国民病と言えそうです。昨今の研究では、新たに「マイボーム腺機能不全(MGD)」という病気との関連性も分かってきました。キーワードは「涙のアブラ不足」です。MGD の診療ガイドラインの責任編集者を務めた天野史郎院長に、ドライアイについて聞きました。
※ドライアイ研究会HP より

天野 史郎
お茶の水・井上眼科クリニック 院長
日本角膜学会 理事
ドライアイ研究会 世話人

ドライアイはこんな病気!

ドライアイは「涙の量が不足したり、涙の成分が変化して、眼の表面を均一に潤すことができなくなる病気」です。「目が乾く」といった不快感だけではなく、乾燥によって眼の表面を傷つけてしまう場合もあります。
その原因もさまざまで、空気の乾燥、PC やスマホの使用(まばたきの数が少ない・きちんとまばたきができていない)、コンタクトレンズの使用、高齢化による涙腺の機能低下、薬や他の病気の影響などが挙げられます。
実は「目が疲れやすい」「ゴロゴロする」「目やにが出る」などの不快感にも、ドライアイの可能性が潜んでいるかもしれません。進行すると、視力低下や痛み、角膜上皮剥離(角膜が乾燥してはがれる病気)を発症してしまうこともあります。慢性化してしまう前に、早めに眼科で検査することが大切です。

ドライアイの仕組み

ドライアイとはいわば「涙の病気」です。涙は角膜を守るために2つの層からできています。涙の蒸発を防ぐために、涙の大部分(95%)を占める「液層」をマイボーム腺から分泌される「油層」で外側を覆うことで涙の膜を作っています。この膜が薄くなると「ドライスポット」という部分が現れます。この部分は、涙でコーティングされていないため、角膜の表面を傷つけやすくしてしまいます。
ドライアイは大きく3つのタイプに分けられます。涙の量が減る「涙液減少型」、涙の油不足などによる「蒸発亢進型」、目の表面の細胞を覆うムチンの不足による「水濡れ性低下型」です。それぞれ治療法が異なるため、詳しい検査をして、涙の状態・バランスなどを調べていく必要があります。

ドライアイの治療法は?

ドライアイの治療には、外から水分を補う、体内から涙の成分を出させる、涙を留めるといったアプローチが挙げられます。一般的には点眼薬による治療が主流で、人工涙液やヒアルロン酸製剤など、目を潤すタイプの点眼薬と、ムチンなどを体内から出せる点眼薬などがあります。涙を留める治療法としては、「涙点プラグ」といって、涙の排出口を液体コラーゲンやシリコン製のプラグで塞いでしまう方法があります。それに加えて、涙の油不足が引き起こすタイプのドライアイに対して、まつ毛の内側にある「マイボーム腺」の状態を調べて、治療していく方法が新たに登場してきました。

マイボーム腺機能不全とは?

マイボーム腺は瞼にあり、油を分泌する腺です。上下のまつ毛のすぐ内側にマイボーム腺の開口部があり、そこから油が分泌されます。本来、マイボーム腺から分泌される油は涙の表面を覆うことで涙の蒸発を抑え、涙を安定させる働きをもっています。マイボーム腺機能不全という病気は、色々な原因によりマイボーム腺の機能が大きく低下した状態です。
マイボーム腺機能不全を起こす原因としては、加齢が最も大きく関与し、他には喫煙、コンタクトレンズ装用、緑内障点眼薬、糖尿病、脂質代謝異常、血圧などが挙げられます。マイボーム腺機能不全になると、涙の油が不足して、涙が不安定になりドライアイが発症します。最近の調査では、「油が足りないタイプのドライアイ」がドライアイ全体の86%以上であることが分かっています
2023年2 月に「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」が発表されました。このガイドラインではマイボーム腺機能不全に対するさまざまな治療法を評価した多数の論文を検討しました。
その結果、推奨できる有用な治療法は、ホームケア、処方薬、クリニックでの施術の3本柱に分けられます。ホームケアとしては、温罨法(おんあんぽう/瞼を温める)、眼瞼清拭(がんけんせいしき/瞼の縁をきれいにする)、オメガ3脂肪酸の内服(サプリとして服薬)があります。処方薬としては、アジスロマイシン点眼、ステロイド点眼、抗菌薬内服があります。クリニックでの施術としては、マイボーム腺分泌物の圧出、LipiFlow(瞼に熱と圧力を与える治療法)、そしてIPL(Intense Pulsed Light)と呼ばれる治療法があります。
※DEWS II report, Ocular Surface, 2017 Lemp, et al.Cornea. 2012 May;31(5):472-8.

IPL 治療の効果は?

IPL 治療は、マイボーム腺機能不全の患者さまの瞼に強い光を当てることにより、マイボーム腺の油の流れをよくする治療法です。当院(お茶の水)でも2021 年よりこの治療法を開始してきました。IPL を行う際には、輪ゴムを皮膚ではじいたような軽い痛みがありますが、耐えられないような痛みではありません。また副作用はほとんどなく、安全な治療法です。ダウンタイム(施術後の制限)は基本的にありませんが、施術後2週間程度、紫外線(日焼け)対策が必要です。症状にもよりますが、3~4週間おきに4回以上実施すると高い効果が期待されています。これまでに世界中で行われ、有効で安全であることが確認されており、マイボーム腺機能不全の重症度によりますが、80%程度の患者さまにおいて、自覚症状、マイボーム腺の状態、ドライアイの状態が改善したことが報告されています

ドライアイIPL光線治療はお茶の水・井上眼科クリニックにて実施しております。
詳しくはこちらのページをご覧ください。




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