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Vol.122 井上眼科の白内障診療 どう選ぶ?眼内レンズ


2022年10月号 Vol.122井上眼科だより

井上 賢治
医療法人社団 済安堂 理事長
井上眼科病院 院長

白内障とは
白内障は、レンズの機能を持つ水晶体が白く濁り、進行すると視力が低下していく病気です。
その主な原因は加齢によるものです。近年では、手術の方法から眼内レンズの種類まで、白内障診療は患者さまのライフスタイルに合わせた選択肢が広がってきています。

白内障手術の最前線
多様化した生活スタイルや趣味に合わせて、レンズが選べる時代


眼内レンズの種類や保険適用の有無で広がる選択肢

この数年で眼内レンズの種類が増え、さまざまな生活スタイルに合ったレンズを選べるようになりました。当院グループが扱う眼内レンズは

①単焦点眼内レンズ
②多焦点眼内レンズ(選定療養)
③多焦点眼内レンズ(自由診療)


の3種類で、年間約8200件の白内障手術を行っています。そのうち約9割が保険適用の①と部分的に保険適用される②で、残りの約1割が自由診療の③です。今回はそれぞれの眼内レンズの特徴と、今年新たに導入された多焦点眼内レンズをご紹介しながら、眼内レンズ選びのポイントをお話ししたいと思います。

3種類の眼内レンズの特徴

①の単焦点眼内レンズは近方または遠方のどちらかひとつにピントがしっかり合いますが、メガネを併用する場合が多いです。
②の多焦点眼内レンズは、複数に焦点を合わせられますが、ピントがやや甘く夜間に光がにじむことがあります。
一方、③の多焦点眼内レンズは、若い頃の視界に一番近いと言われています。ただし自由診療となるので費用が高額になります。また眼の状態によっては手術が受けられない場合もあります。

多様なオプションから多焦点眼内レンズを選べる「レーザー白内障手術」

「レーザー白内障手術」は、「フェムトセカンドレーザー」と多焦点眼内レンズ「レンティス」を使用した当院独自の白内障手術です。今年9月、レーザー白内障手術で使用できる多焦点眼内レンズが、2種類追加されました。中間がやや見づらい多焦点眼内レンズの欠点をカバーし、より自然な見え方に近づいたアクリバトリノバ(3焦点)とインテンシティ(5焦点)という製品です。それぞれの製品のメリットとデメリットや費用などの詳細は、毎月開催している説明会でお話ししています。ご興味のある方はぜひご参加ください。
レーザー白内障手術では、重要な工程を高精度のフェムトセカンドレーザーが全自動で行います。待ち時間がほとんどない自由診療のフロアでの診察なので、お忙しい方でも予定が立てやすいのも魅力でしょう。

フェムトセカンドレーザー

レンティス、アクリバトリノバ、インテンシティ

どの製品も一長一短。眼内レンズを選ぶ際のポイントは?

眼内レンズは高価であれば良いというものではありません。また医師の技術も医療機器も大きく進歩している現代では、全自動レーザー手術の方がはるかに優れているとも言い切れません。まずは患者さまご自身が、どのような生活がしたいのかを考え、術後の理想の見え方をイメージしていただくことが何よりも大切です。その上で、患者さまのニーズに合った眼内レンズと手術の方法をご提案していきたいと思います。
多くの方にとって白内障手術は一生に一度のもの。幸い、白内障手術は緊急性がないことが多いので、じっくり時間をかけて正しい知識を得ていただきたいですね。当院グループでは、医師による説明に加え、視能訓練士による丁寧な事前カウンセリングを行っております。ぜひ、十分に納得された上で、ご自分のライフスタイルに合った眼内レンズをお選びください。

当院では、以下の種類の眼内レンズを取り扱っています。
種類によって見え方には違いが出ます。

単焦点眼内レンズの見え方

[ 単焦点眼内レンズ:保険適用 ]
ひとつの距離にピントを合わせます。合っているところは鮮明に見えますが、それ以外を見るにはメガネが必要です。上記写真は、遠くにピントを合わせた場合の見え方です。

多焦点眼内レンズの見え方

[ 多焦点眼内レンズ:選定療養※/自由診療 ]
複数の距離にピントを合わせます。見える範囲は広いですが、ピントが甘く光がにじむことがあったり、希望する見え方にはならない場合もあります。

自由診療のレンズをお選びいただくと、「フェムトセカンドレーザー」を使用した手術を行います。レーザーで正確な切開創を作成し、レンズの効果を最大限に発揮します。 ※手術は保険適用/レンズにかかる費用は保険適用外

眼内レンズの疑問、
先生に聞きました

田中 宏樹
西葛西・井上眼科病院 院長

Q. 他の眼の病気があっても、多焦点眼内レンズを入れられますか?

A. 白内障以外の眼の病気があると、多焦点眼内レンズの機能を十分発揮できないため、適応にならない場合が多いです。網膜疾患(糖尿病網膜症や加齢黄斑変性など)の方や、非常に高齢で網膜の機能が落ちている可能性がある方は、見え方の質が劣ってしまうため、非適応となることがあります。 

徳田 芳浩
井上眼科病院 副院長

Q. 手術を受けるタイミングはいつがいいでしょうか?

A. 一般的な白内障手術であれば、日常生活に不自由を感じたときに行うのがいいでしょう。視力はあまり目安にはなりません。普段の生活で0.9でも見えづらいと感じる方もいれば、0.3でもそれほど困らない方もいます。治療に急を要するケースは稀ですが、見え方に異常を感じる原因は白内障だけなのか、きちんと眼科で確認することが重要です。

野﨑 令恵
大宮・井上眼科クリニック 院長

Q. 多焦点眼内レンズを選ぶと、メガネは不要になりますか?

A. 若い頃と同様、メガネなしで生活したいというニーズに応えるため誕生したのが、多焦点眼内レンズです。単焦点眼内レンズに比べ、日常生活でメガネが必要になる場面は減ります。しかし複数の箇所に光を振り分けるので、見え方のシャープさは劣ります。コントラスト感度の低下や夜間の光のにじみなど、デメリットもあることを理解した上でご検討ください。

清水 恒輔
札幌・井上眼科クリニック 院長

Q. 眼内レンズには寿命はありますか?

A. 現在使用されている眼内レンズは、研究にて長期間での耐久性が証明されております。生まれつき白内障になっている先天白内障のお子さまにも、眼内レンズは適応として認められています。見え方がどうしても合わない時や、眼内レンズの位置がズレてしまった時以外には、取り換えすることは通常ありません。
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