加齢黄斑変性
加齢黄斑変性とは
加齢黄斑変性とは、年齢と共に黄斑に変化が生じ、視機能が低下してくる病気。「見たいところが歪む(変視症)」、「見ている物の中心が暗く見える(中心暗点)」といった症状が表れます。多くは片方の目から発症しますが、両目で見ているため異変になかなか気づきません。欧米では成人の失明原因第1位であり、日本も高齢化や食の欧米化により増加傾向にあります。
変視症
中心暗転
※見え方のイメージです。
病気のタイプは大きく2つ
加齢黄斑変性のタイプは大きく以下の2つに分類されます。特に日本人に多いのは「滲出型(しんしゅつ型)」と呼ばれるタイプ。主な原因は、脈絡膜から発生する「新生血管(本来ない場所にできる異常な血管)」が増殖し、黄斑部に漏れ出す(滲出)ことに起因します。一方、「萎縮型」は、加齢とともに黄斑の組織が徐々に萎縮することが原因です。こちらは進行がゆっくりなため、食生活や運動習慣の改善を図りつつ、定期的な経過観察が必要です。
眼底検査は大切です!
加齢黄斑変性は発症する前段階には「前駆病変」と呼ばれる状態があります。自覚症状はありませんが、黄斑部にドルーゼン(脂質やたんぱく質の沈着物)や色素異常が見られ、この後に新生血管が発生するケースが高いです。そのため早期発見・早期治療につなげるためにも眼底検査は非常に大切な検査となってきます。
なぜ「新生血管」は発生するの?
ひとつの原因として「網膜の下に老廃物が溜まってしまうこと」が考えられています。黄斑部は目に入ってきた情報を処理する際にたくさんのエネルギーを消費しています。そのため、栄養や酸素を網膜や脈絡膜の毛細血管から得ています。その新陳代謝で生じる老廃物は、通常、網膜色素上皮内にて消化されるのですが、加齢などにより上手く処理ができなくなると、網膜と脈絡膜の間に老廃物が蓄積され、弱い炎症を引き起こします。この炎症を鎮めようと、脈絡膜から網膜の方へ新生血管が伸びてくると考えられています。
滲出型の治療法
新生血管の活動はある時期が来ればおさまりますが、その時に黄斑の組織が破壊されていると、永続的な視力障害が残ってしまいます。そのためにも早めの治療が肝心です。最初の治療のポイントは「新生血管が中心窩にまで及んでいるかどうか」という点です。滲出型の加齢黄斑変性は、新生血管の位置やタイプで治療が異なりますが、「新生血管の増殖を食い止める」という点では共通しています。視力の程度や進行の状態を見ながら、3つの治療法を選択していきます。
硝子体注射(抗VEGF療法)
現在、滲出型タイプの新生血管に対する第一選択の治療法となっています。新生血管の成長を促す「VEGF(血管内皮細胞増殖因子)」という物質の働きを抑えることを目的に、硝子体の中に抗VEGF薬を注射します。麻酔薬を点眼して注射するため、痛みはほとんどありません。これにより視力の要である中心窩にまで新生血管が広がるのを抑え、新生血管を縮小させます。注射の頻度や回数、使用する薬剤の種類は、疾患の状態によって変わりますが、治療の効果も1~2ヵ月程度のため、定期的に治療を続けていく必要があります。この治療法により、新生血管の発育が止まり、視機能が維持されるだけでなく、出血や滲出物の吸収と共に視機能が回復することも期待されます。
PDT(光線力学療法)
光に反応する特殊な薬(ベルテポルフィン)を静脈から点滴していきます。この薬は新生血管にだけ集まる性質があり、その作用を利用してレーザーを照射して化学反応を起こさせることで、新生血管の内壁を詰まらせる方法です。周囲の正常な組織にダメージを与えないため、視力低下のリスクを減少させる効果的な治療法です。但し、強い光にあたると副作用としてやけどに似た症状がおこります。そのため、体から薬が抜けるまで(治療後2~5日間)は、外出を控えるなど、強い光に当たらない様に過ごす必要があります。
レーザー光凝固術
特殊なコンタクトレンズを装用し、新生血管に直接レーザーを照射して焼きつぶす治療法です。そのため、新生血管が中心窩に及んでいない場合にのみ行います。1回限りで治療時間も数十分程度というメリットがある上、新生血管がなくなることで進行も止まり、その時点の視機能を保つことが出来ます。但し、強いレーザー光を当てるため、新生血管の周囲にあるし網膜の視細胞も破壊されてしまいます。
当院グループでは年間5,000件以上の硝子体注射を行っています
「眼に注射をする」と聞くと少しびっくりしてしまいますが、硝子体注射のメリットは「眼内に直接薬剤を投与することで全身的な副作用のリスクを軽減できる点」にあります。それにより点眼薬は内服薬とは異なり、硝子体内の病変に対してより強く治療効果を引き出すことが出来ます。現在は加齢黄斑変性に加え、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの疾患にも使われる治療法として確立しており、当院グループでは5種類のタイプや効果が違う抗VEGF薬を使用し、年間5,000件以上(グループ累計)の硝子体注射が行われています。
月に1回は見え方チェックを!
加齢黄斑変性は早期発見・早期治療がとても重要です。そのためにも症状にいち早く気づくことが大切。見え方の変化をチェックする方法が、この「アムスラーチャート」です。ぜひ月に1 回、チェックするようにしてみてください。
見え方がおかしいな・・・と感じたら、井上眼科病院グループにご相談ください